白馬神事(あおうましんじ)

宮廷では正月七日に白馬節会と称して、白馬を見 る後式があ った。

もとは青馬 で、奈良時代に既におこなわれていた。

「万葉集」に、 天平宝字二年(758)正月七日の侍宴のために詠んだ 大伴家持の歌があり、

水鳥の鴨の羽の色の青馬をけふ見る人は限りなし (四四九四)

というもので、年の初めに青馬を見ることは延命長寿 を祈るしるしであったことが知られる。青馬が白馬にかわったのはいつの頃か不明であるが、 白馬となっても、呼ぶには「アオウマ」のままのこしたのであろう。

宮廷行事は諸国の社寺に伝えられていく ものが多い。

白馬節会も、京都の賀茂社で は、白馬奏覧神事と称して、やはり一月七日におこない、七草粥を奉って白馬を神覧 白馬神車 に供する。

嵯天皇の弘仁十年(八一九)を 初見とするが、このとき既に青馬は白馬となっていた。

摂津の住吉大社でも、白馬神 事と称し、いまに統いている。

春のはじめに白馬を見れば年中邪気を退ける、つまり風邪をひか ないという信仰による。

祝詞奏上の後、神馬が各本宮を拝した上、本殿の周囲を三匝(三回廻る) する。むかしはこの日、七種菜の裂膳があった。七種菜というのは、いわゆる春の七草で、芹(せり)・弊(なずな)・御形(ごぎょう)・はこべら・仏座(ほとけのざ)・すずな・すずしろ(大根)をいう。

賀茂 社でも、七草粥を献った。 同社では、小松や笹等の青いものを見たり、身につけたり、食したりすることは生命力を長久に するとともに神霊遷依の手段になるとしている。

白馬を「アオウマ」と称するのも同じ思想であ さんそう ろう。

初春にあたって七草にこもる神威を身に享けて、生命力の更新をはかったのである。

 

2018年8月19日